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歯医者が怖い、何年も行っていない人へ。怒られる? 麻酔は効く? 歯科医師が本音で答える、怖さを減らす方法と静脈内鎮静法

歯医者が怖い、何年も行っていない人へ。怒られる? 麻酔は効く? 歯科医師が本音で答える、怖さを減らす方法と静脈内鎮静法 歯医者のホンネ

この記事の結論

「何年も来ていなくて……怒られませんか?」——歯医者が怖くて、足が遠のいている方は少なくありません。先に答えを書きます。

  • 怒りません。何年ぶりでも、私の本音は「よく来てくれた」です
  • 歯医者が怖いのは、あなただけではありません。世界の調査をまとめた分析では、大人の15.3%が歯科への恐怖や不安を持っていました[1]
  • 「麻酔が効かない体質」は、まず心配いりません。日本歯科麻酔学会は、体質で局所麻酔の効き目が左右されることはないと説明しています。効きにくくなるのは、強い炎症や膿があるときや、緊張が強いときです[2]。つまり、痛くなってから行くほど、治療は痛くなりやすいのです
  • 「怖い」は、予約のときに必ず伝えてください。患者さんを苦しませようと思っている歯科医師や歯科衛生士はいません
  • どうしても無理なら、静脈内鎮静法があります。眠ったような状態で治療を受けられる方法で、歯科治療恐怖症や嘔吐反射が強い人などは、保険で受けられます[3][4]。ただし、行っている医院は多くありません
  • 実は私も、歯医者は大嫌いです。だからこそ、予防のために定期的に通っています

この記事では、歯医者が怖くなる理由、「麻酔が効かない体質」の本当のところ、歯科医師の本音、怖さを減らすためにできること、静脈内鎮静法、受診の目安を書きます。文中の[番号]は記事末尾の参考文献です。

歯医者が怖いのは、あなただけではない

世界の31の調査(大人7万人あまり)をまとめた分析では、歯科への恐怖や不安がある人は15.3%、強い恐怖がある人は12.4%でした。女性と若い人に多い傾向があります[1]。調査ごとの質にばらつきがあるので、数字は目安です。

きっかけは、子どものころの体験が多い

診療をしていて、子どものころの体験が原因になっている方が多いと感じます。歯医者は「痛いことをされる場所」というイメージが、大人になってもそのまま残っているのです。

研究でも、歯科への恐怖の原因として、つらい体験そのもののほか、家族の話やテレビなどから受けた印象、生まれ持った性格などが挙げられています。原因は一つではありません[5]。

「何をされているか分からない」怖さ

昔は、説明がないまま治療が進んでいくことが多かったのだと思います。何をされているのか分からないまま口を開けていた、という方は少なくありません。

今は、口の中の写真や、口腔内スキャナー(口の中を立体的に撮影する機械)の画像を見せてから治療を始めることが多くなっています。自分の口の中で何が起きていて、これから何をするのかを、ある程度分かったうえで治療を受けられます。

怖い → 行かない → 悪くなる → 治療が大きくなる

怖さがあると、受診を先延ばしにしたり、予約をキャンセルしたりしやすくなります。その結果、口の中の健康が悪くなることが、研究でも示されています[6][1]。

歯周病は、初めのうちは症状がないことがあります[7]。私の実感では、むし歯も歯周病も、症状が出たときにはかなり進んでいます。

歯医者が怖い方は、たいてい痛みや腫れが出てから来院されます。そのときには、ご本人が思っている以上に、やらなければならない治療が多いことがほとんどです。何年も放っておいた口の中は、1本だけでなく、全体が崩れていることも少なくありません。

歯を失うまでの経過は、歯を失う原因の1位は歯周病。「なんとか残せませんか?」に歯科医師が本音で答える、抜歯に至る3つの経過に書きました。

「麻酔が効かない体質」は本当にある?

「私、麻酔が効かない体質なんです」と言われることがあります。

日本歯科麻酔学会は、体質によって局所麻酔薬の効果が左右されることはないと説明しています[2]。そのうえで、麻酔が効きにくくなる場面として、次のようなものを挙げています[2]。

  • 歯や歯ぐきのまわりに、強い炎症があるとき
  • 膿がたまっているとき
  • 骨が固く、麻酔がしみこみにくい場所(下の奥歯など)
  • 治療中に痛みを繰り返したときや、緊張が強いとき(痛みに過敏になる)

特に炎症の影響は大きく、急に強い炎症を起こした歯は、健康な歯より最大で8倍麻酔が効きにくい、とする解説もあります[8]。また、不安が強い人ほど、治療の前や最中に痛みを感じやすいという報告もあります(根の治療の研究で、確からしさは低い)[9]。

「前に麻酔が効かなかった」という経験は、体質ではなく、そのときの歯の状態や緊張によるものだった可能性が高いのです。

検査が痛いのも、炎症が強いから

歯周病の検査(歯と歯ぐきのすき間の深さを測る検査)も、歯ぐきの炎症が強い人ほど痛がる、と私は感じています。きちんと管理されている歯ぐきなら、検査はほとんど痛くありません。この点を調べた研究は少人数のものに限られますが、診療での実感です。

急に強く痛みだした歯(急性の歯髄炎など)も同じで、触るだけで痛みます。歯科医師はみな、麻酔をしっかり効かせて、痛くないように治療したいと思っています。ただ、炎症が強い状態では、それにも限界があります。

だから、痛くなる前に行くことが、いちばん痛くない方法なのです。

夜中や休日に急に痛くなったときの対処は、夜中・休日に歯が痛いときの応急処置と、やってはいけないこと。歯科医師が書く、今すぐ受診すべきサインにまとめました。

歯科医師の本音: 怒るどころか「よく来てくれた」

何年も来ていなかった患者さんに、私が思うこと

「よく来てくれたな」です。怒ることも、あきれることもありません。

怖い思いをしながら、それでも予約を取って来てくれた。それだけで十分です。最初から全部うまくやろうとしなくていいので、少しずつ慣れていってもらえればと思っています。

実は私も、歯医者が大嫌いです

正直に書くと、私自身、歯医者は大嫌いです。痛いことをされるので。

だからこそ、定期的なクリーニングは欠かしません。歯ぐきの状態がよければ検査は痛くありませんし、むし歯がなければ痛い思いをすることも少ないからです。

歯医者が怖い人ほど、予防のために通う。矛盾しているようですが、痛い治療を避けるいちばん確実な方法だと考えています。

怖さを減らすために、できること

1. 予約のときに「怖い」と伝える

必ず伝えてください。患者さんを苦しませようと思っている歯科医師や歯科衛生士はいません。最初に分かっていれば、説明を丁寧にしたり、休憩をはさんだり、進め方を変えたりできます。

伝えておくとよいことの例です。

  • 歯医者が怖いこと、昔つらい経験をしたこと
  • えずきやすい(のどの奥を触られると吐き気がする)こと
  • 治療中に休みたいときの合図(手を挙げる、など)を決めておきたいこと
  • 持病や、飲んでいる薬

えずきやすい人(嘔吐反射が強い人)は、まずかかりつけの歯科医師に伝えて、相談することが勧められています[2]。

2. 症状が出る前に行く

上に書いたとおり、炎症が強くなってからの治療ほど、麻酔が効きにくく、痛くなりやすくなります。

3. 怖さそのものを軽くする方法もある

歯科への恐怖が強い場合、認知行動療法(考え方と行動に働きかける心理療法)で、長く続く歯科への不安が軽くなることが、ランダム化比較試験をまとめた分析で示されています(確からしさは中程度)[10]。一方で、治療中に音楽を聴く、VR(仮想現実)を使う、といった方法は、不安を減らす効果がはっきりしませんでした[10]。

4. 静脈内鎮静法を使う

どうしても怖い、えずいてしまって治療ができない、という方には、静脈内鎮静法という方法があります。

静脈内鎮静法: 眠ったような状態で治療を受ける方法

私も診療で使っていて、かなり役に立つ方法だと感じています。

どんな方法か

腕の静脈から鎮静薬を入れて、うとうとした、リラックスした状態で治療を受ける方法です。全身麻酔とは違い、意識がなくなるわけではなく、呼びかけには反応できます[2][3]。治療中のことをあまり覚えていないことが多く、アンケートでは94%の人にこの「忘れる効果」がみられたと報告されています[3]。

向いている人、注意が必要な人

日本歯科麻酔学会のガイドラインでは、次のように整理されています[3]。

静脈内鎮静法が向いている人・注意が必要な人

日本歯科麻酔学会「歯科診療における静脈内鎮静法ガイドライン—改訂第2版(2017)」より[3]

向いている人
  • 歯科治療恐怖症
  • 嘔吐反射(えずき)が強い
  • 治療中に気分が悪くなる、過呼吸やパニック発作を起こしやすい
  • 高血圧や心臓の病気があり、治療中の血圧などを安定させたい
  • 体への負担が大きい処置を受ける
特に慎重な対応が必要

受けられないわけではありません

  • 精神科の薬(向精神薬)を長く飲んでいる
  • 高度の肥満や睡眠時無呼吸症候群など、のどがふさがりやすい
  • 重い全身の病気がある
  • 以前の鎮静で問題が起きたことがある
受けられない人
  • 妊娠初期
  • 使う薬にアレルギーがある
  • 使う薬が使えない病気がある(重症筋無力症など)

持病がある方や、精神科の薬などを飲んでいる方は、薬の調整が必要になることがあります。必ず事前に伝えてください。

保険は使える?

歯科治療恐怖症や嘔吐反射が強い人などは、保険で静脈内鎮静法を受けられます[4]。日本歯科麻酔学会も、静脈内鎮静法と笑気吸入鎮静法(鼻から笑気ガスを吸ってリラックスする方法)は、どちらも健康保険の対象だと説明しています[2]。自己負担の金額は、保険の種類や治療内容で変わるので、事前に医院に確認してください[2]。

ただし、インプラントなど自費の治療を、静脈内鎮静法を使って受ける場合は、鎮静も自費になります。保険の治療と保険外の治療を一緒に受けられるのは、国が決めた範囲に限られているためです[11]。保険と自費の考え方は、保険と自費、歯科医師はどう考えているか。「自費を勧められた」ときに聞いておきたいことに書きました。

当日の注意

  • 付き添いの人と一緒に帰るのが原則です[3]
  • 当日は、車の運転や、大事な判断が必要な仕事は避けてください[3]
  • 食事や水分の制限があることがあります。医院の指示に従ってください[3]

どこで受けられる?

静脈内鎮静法を行っている医院は、多くはありません。歯科のある大学病院などで、歯科麻酔を専門とする歯科医師に相談できます[2]。日本歯科麻酔学会のサイトでは、都道府県ごとに歯科麻酔専門医を探せます[12]。

親知らずの抜歯で全身麻酔を希望する場合は、大きな病院の口腔外科を紹介されることもあります。詳しくは痛くない親知らずも抜くべき? 口腔外科の歯科医師が書く、年齢や病気で「抜けなくなる」前に知っておきたいことに書きました。

受診の目安

痛い・腫れている・夜も眠れない
できるだけ早く受診
症状はないが、1年以上歯医者に行っていない
症状がなくても一度受診
怖くて、治療を受ける決心がつかない
最初は「検査と相談だけ」でもよい

どの場合も、予約のときに「怖い」と伝えてください。

焦る必要はありません。ただ、この記事をここまで読んでくださったということは、ご自分の口の中が気になっている、ということだと思います。今が、いちばんいいタイミングです。

磨けない日の「最低ライン」は、歯磨きしないで寝たら、すぐむし歯になる? 歯科医師が答える、1日何回・いつ磨くかの「最低ライン」に書きました。

よくある質問

Q. 何年も歯医者に行っていません。怒られませんか?

A. 怒られません。少なくとも私は、何年ぶりの患者さんにも「よく来てくれた」と思います。予約のときに「何年も行っていなくて、怖い」と伝えてください。

Q. 「麻酔が効かない体質」と言われたことがあります。

A. 日本歯科麻酔学会は、体質で局所麻酔の効き目が左右されることはないと説明しています。強い炎症や膿があるときや、緊張が強いときに効きにくくなります[2]。痛みが強くなる前に受診する方が、麻酔は効きやすくなります。

Q. 静脈内鎮静法は保険で受けられますか?

A. 歯科治療恐怖症や嘔吐反射が強い人などは、保険で受けられます[4]。ただし、インプラントなど自費の治療と一緒に受ける場合は、鎮静も自費になります。行っている医院は多くないので、歯科のある大学病院などに相談してください。

Q. 静脈内鎮静法を受けた日、自分で車を運転して帰れますか?

A. 運転はできません。当日は車の運転や大事な判断が必要な仕事を避け、付き添いの人と一緒に帰るのが原則です[3]。

Q. えずきやすくて、歯医者に行けません。

A. まず、予約先やかかりつけの歯科医師に、えずきやすいことを伝えて相談してください。それでも治療が難しい場合は、静脈内鎮静法などを使って治療する方法があります[2]。

この記事を書いた人

現役の歯科医師です。歯科医師として5年以上、口腔外科を中心に診療しています。静脈内鎮静法も、診療で使っています。実は私自身、歯医者は大嫌いです。だからこそ、痛い思いをしないために、定期的なクリーニングを欠かしません。

参考文献

  1. Silveira ER, Cademartori MG, Schuch HS, Armfield JA, Demarco FF. Estimated prevalence of dental fear in adults: A systematic review and meta-analysis. J Dent. 2021;108:103632. DOI
  2. 日本歯科麻酔学会. 歯科麻酔Q&A(2026年10月閲覧). リンク
  3. 日本歯科麻酔学会 ガイドライン策定委員会. 歯科診療における静脈内鎮静法ガイドライン—改訂第2版(2017). 2017年3月. リンク
  4. しろぼんねっと. 歯科診療報酬点数表(令和8年) K003 静脈内鎮静法. リンク
  5. Beaton L, Freeman R, Humphris G. Why are people afraid of the dentist? Observations and explanations. Med Princ Pract. 2014;23(4):295-301. DOI
  6. Hoffmann B, Erwood K, Ncomanzi S, et al. Management strategies for adult patients with dental anxiety in the dental clinic: a systematic review. Aust Dent J. 2022;67 Suppl 1:S3-S13. DOI
  7. Department of Health and Social Care, et al. Delivering better oral health: an evidence-based toolkit for prevention. Chapter 5: periodontal diseases. 4th ed. 2021(2025年9月更新). リンク
  8. Virdee SS, Seymour D, Bhakta S. Effective anaesthesia of the acutely inflamed pulp: part 1. The acutely inflamed pulp. Br Dent J. 2015;219(8):385-390. DOI
  9. Farias ZBBM, Campello CP, da Silveira MMF, et al. The influence of anxiety on pain perception and its repercussion on endodontic treatment: a systematic review. Clin Oral Investig. 2023;27(10):5709-5718. DOI
  10. Steenen SA, Linke F, van Westrhenen R, de Jongh A. Interventions to reduce adult state anxiety, dental trait anxiety, and dental phobia: A systematic review and meta-analyses of randomized controlled trials. J Anxiety Disord. 2024;105:102891. DOI
  11. 厚生労働省. 保険外併用療養費制度について(2026年10月閲覧). リンク
  12. 日本歯科麻酔学会. 歯科麻酔専門医一覧(2026年10月閲覧). リンク

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