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夜中・休日に歯が痛いときの応急処置と、やってはいけないこと。歯科医師が書く、今すぐ受診すべきサイン

夜中・休日に歯が痛いときの応急処置と、やってはいけないこと。歯科医師が書く、今すぐ受診すべきサイン 歯のトラブル

この記事の結論

「今すぐ行った方がいいですか?」——夜や休日に歯が痛くなった方から、いちばんよく聞かれる質問です。先に答えを書きます。

  • 息苦しい、唾も飲み込めない、声がこもる。この場合はすぐに救急へ(119番、または救急外来)[1][2]。のどの周りまで腫れが広がっている危険なサインです
  • 顔や首まで腫れている、口が開かない、熱がある、食事や水分がとれない。この場合は夜間・休日でも、当番の歯科や病院の口腔外科に連絡してください
  • 痛いだけなら、痛み止めで夜をしのぎ、翌朝すぐに歯科へ連絡してください
  • 痛み止めは、以前に問題なく飲めたものを、説明書どおりに[3]。家にある余りを、よく分からないまま多めに飲むのは危険です
  • 以前もらった抗生物質の残りを、自己判断で飲まないでください。歯の痛みの多くに、抗生物質は効きません[4][5]
  • 痛みが引いても、治ったわけではありません。痛み止めは痛みを抑えるだけで、原因を治すものではないからです

この記事では、今すぐ受診すべきかの判断、夜間・休日の歯の痛みの主な原因、受診までの応急処置、やってはいけないことを、海外のガイドラインと診療の実感から書きます。文中の[番号]は記事末尾の参考文献です。

「今すぐ行くべきか」の判断

私の勤務先では、診療時間内に「痛い」と連絡をいただいたら、基本的にはその日に来てもらいます。問題は、夜間や休日です。判断の目安を表にしました。

夜間・休日の歯の痛み、どうするか

上から順に確かめてください。当てはまったところで行動を決めます

息苦しい、呼吸のときにヒューヒュー音がする、唾も飲み込めない、声がこもる[1][2]

腫れが急に広がっている場合も同じ

すぐに救急(119番)

顔や首まで腫れている、口が開かない、熱がある、食事や水分がとれない

夜間・休日でも受診

痛いだけ

腫れ・熱・飲み込みや呼吸の問題はない

痛み止めで夜をしのぎ、翌朝すぐ歯科へ連絡

どうしたらいいか迷う

#7119に電話で相談[6]

最初の行は、スコットランドの歯科のガイダンスで「気道が危険な状態」とされている症状です。歯の根の先の膿や、親知らずの周りの炎症から腫れがのどに広がると、空気の通り道が狭くなることがあります。この場合は、歯科ではなく、すぐに救急につなぐよう定めています[1][2]。

持病がある方は、早めの受診を考えてください。入院が必要になった重い歯の感染症を調べた研究では、高齢の方、糖尿病の方、免疫を抑える治療を受けている方ほど、入院が長引いていました[7]。私も、歯の感染症では、患者さんの持病や体の状態がとても大事だと感じています。

夜間・休日の歯の痛み、主な原因

私は口腔外科で診療しているので、夜間や休日に連絡が来るのは、次の2つがとくに多いです。

  • 歯の神経の炎症(歯髄炎): むし歯が深くなり、中の神経が炎症を起こした状態です。ズキズキした痛みが何時間も続き、夜眠れなくなることがあります。熱いもので悪化し、冷やすと楽になることもあります[8]
  • 親知らずの周りの炎症(智歯周囲炎): 半分だけ生えた親知らずの周りの歯ぐきが腫れる状態です。飲み込むときの痛み、口の開きにくさ、熱が出ることもあります[2]

ほかに、歯の根の先に膿がたまる膿瘍では、噛むと痛む、歯ぐきや顔が腫れる、熱が出る、などが起こります[1]。

たまにですが、感染が顔や首の広い範囲に広がった蜂窩織炎(ほうかしきえん)で来院される方もいます。放っておくと、この状態に進むことがあります。飲み薬だけでは抑えきれず、入院が必要になることもあります。

受診までにできること

スコットランドの歯科のガイダンスは、歯科を受診するまでのセルフケアとして、次のことを挙げています[3]。

  • 熱いもの・冷たいものなど、痛みを強める刺激を避ける。冷たい水や砕いた氷を歯の周りに含むと、楽になる痛みもあります
  • 横になると痛みが強くなることがあるので、上体を少し起こして休む
  • 痛み止めは、以前に問題なく効いたもの(イブプロフェンやアセトアミノフェンなど)を使い、1日の上限を超えない。説明書の量と注意を守る
  • 錠剤は飲み込む。痛い歯の横に置かない。歯ぐきなどを傷めます
  • 親知らずの周りが腫れているときは、塩水でのうがいも勧められています[2]

痛み止めについて補足します。アメリカ歯科医師会のガイドラインでは、歯の痛みに治療までのつなぎで使う痛み止めの第一選択は、医療用麻薬(オピオイド)以外の薬です。イブプロフェンなどの消炎鎮痛薬を単独で、またはアセトアミノフェンと組み合わせて使うと、医療用麻薬より痛みがよく取れ、安全性も高いとされています[9]。

一方で、私は市販の痛み止めを患者さんに勧めることはありません。歯科で処方するときは、アセトアミノフェンを決まった時間に飲み、痛みが強いときに消炎鎮痛薬を追加する、という組み合わせをよく使います。持病がある方、胃腸や腎臓が弱い方、妊娠中の方、ほかに薬を飲んでいる方は、自己判断で飲まず、薬剤師や医療機関に相談してください。

やってはいけないこと

1. 家にある痛み止めを、よく分からないまま多めに飲む

ロキソプロフェン(ロキソニンなど)を繰り返し飲んでいる方は、診療でよく見ます。家に余っているものを、量もよく分からないまま飲んでいる方も少なくありません。

ロキソプロフェンの添付文書には、胃の潰瘍や消化管からの出血、急性の腎臓の障害などが、重大な副作用として載っています[10]。アセトアミノフェンも、量が多すぎると肝臓を傷めます。市販のかぜ薬や痛み止めの多くにアセトアミノフェンが含まれているので、気づかないうちに重ねて飲んでいることがあります[3][11]。

そして何より、痛み止めは痛みを抑えるだけで、原因を治すものではありません。

2. 以前もらった抗生物質の残りを、とりあえず飲む

「前にもらった抗生物質が残っていたので飲んだ」という方もいます。でも、歯の痛みの多くに、抗生物質は効きません。

  • アメリカ歯科医師会のガイドラインは、歯の神経の炎症や、根の先の炎症・膿による痛みの多くで、抗生物質を使わないよう勧めています。効果はほとんどなく、害が大きい可能性があるからです。使うのは、熱やだるさなど全身に症状が出ている場合や、広がるおそれが高い場合に限られます[4]
  • 国際的な医学研究のまとめでも、治療に抗生物質を加えても、痛みや腫れにほとんど差がありませんでした[5]

一方で、腫れが広がっている、熱があるなど、感染が広がっている場合には、抗生物質が必要になります[4][5]。ただ、抗生物質は飲んですぐに効くものではなく、効いてくるまでに数日かかります。だからこそ、自己判断で残りを「とりあえず」飲むのではなく、歯科で診てもらったうえで、必要なものを必要な量だけ使うことが大切です。必要のない抗生物質を飲むと、薬が効かない菌(耐性菌)を増やすことにもつながります[5]。

もう一つ、よくある誤解があります。抗生物質を飲んで下痢になったことを、「アレルギー」と思っている方です。

  • アメリカでは約10%の人がペニシリンアレルギーと申告していますが、本当に問題になるアレルギーは5%未満とされています。下痢などの胃腸の症状だけなら、アレルギーの可能性は低い経過に分類されます[12]
  • 重い歯の感染症の研究では、ペニシリンアレルギーと記録された人は、抗生物質が効かない菌が見つかる割合が2.3倍高くなっていました[7]

「アレルギー」の記録があると、よく効く薬が使えなくなり、別の薬を使うことになります。下痢をアレルギーと思い込むことは、自分が使える薬を減らすことにつながります。気になる方は、医療機関で相談してください。

3. お酒で紛らわす

お酒で痛みを紛らわすのは、やめてください。アセトアミノフェンの添付文書では、お酒を多く飲む人は肝臓の障害が起きやすいとされています[11]。

4. 自己判断で温める・冷やす

「冷やすのと温めるのは、どちらがいいですか」とよく聞かれます。答えは「原因による」です。歯の神経の炎症では、熱いもので痛みが強くなり、冷やすと楽になることがあります[8]。迷ったら、強く温めたり冷やしたりせず、ガイダンスにあるとおり冷たい水を口に含む程度にしてください[3]。

5. 痛みが引いたから、歯科に行かない

痛み止めで痛みが引くと、治ったように感じます。でも、それは痛みを抑えただけです。

歯の神経の炎症は、神経が死ぬと痛みがいったん消えることがあります。でも、そのまま放っておくと、根の先に膿がたまり、後で大きく腫れることがあります[5]。

夜間・休日に、どこに連絡するか

  • 地域の歯科医師会の休日当番医: 多くの地域で、休日に診療する歯科医院が当番制で決まっています。お住まいの地域の歯科医師会や自治体のホームページで確認できます
  • 病院の口腔外科: 口腔外科のある病院には、夜間も当直の医師がいます。ただし、よほど緊急性がなければ、夜間に歯の治療をすることはふつうありません。本当に困ったときの連絡先と考えてください
  • 救急安心センター(#7119): 救急車を呼ぶべきか、今すぐ病院に行くべきか迷ったときに、医師や看護師などに電話で相談できます。全国の多くの地域で実施されています[6]
  • 息苦しい、飲み込めない場合は、迷わず119番[1][2]

よくある質問

Q. 夜中に歯が痛くて眠れません。救急車を呼んでもいいですか?

A. 息苦しい、唾も飲み込めない、声がこもる、腫れが急に広がっている、という場合は呼んでください[1][2]。痛いだけなら、痛み止めで夜をしのぎ、翌朝すぐ歯科に連絡してください。迷ったら#7119で相談できます[6]。

Q. 市販の痛み止めは、何を飲めばいいですか?

A. 以前に問題なく飲めたものを、説明書どおりに使ってください[3]。海外のガイドラインでは、イブプロフェンなどの消炎鎮痛薬が第一選択です[9]。持病がある方、胃腸や腎臓が弱い方、妊娠中の方は、薬剤師に相談してください。

Q. 冷やした方がいいですか、温めた方がいいですか?

A. 原因によります。歯の神経の炎症では、温めると痛みが強くなることがあります[8]。迷ったら、冷たい水を口に含む程度にしてください[3]。

Q. 前にもらった抗生物質が残っています。飲んでもいいですか?

A. 自己判断で飲まないでください。歯の痛みの多くに抗生物質は効かず、耐性菌を増やすことにもつながります[4][5]。感染が広がっている場合は必要になりますが、効くまでに数日かかるので、まず受診して必要かどうかを判断してもらってください。

Q. 痛みが引きました。もう歯科に行かなくていいですか?

A. 行ってください。痛み止めは原因を治すものではありません。神経の炎症などは、放っておくと後で大きく腫れることがあります[5]。

この記事を書いた人

現役の歯科医師です。歯科医師として5年以上、口腔外科を中心に診療しています。夜間や休日の「歯が痛い」という連絡の中には、朝まで待てるものと、すぐに救急につなぐべきものが混ざっています。その見分け方と、受診までの過ごし方を書きました。

参考文献

  1. Scottish Dental Clinical Effectiveness Programme (SDCEP). Management of Acute Dental Problems: Acute apical abscess(2026年10月閲覧). リンク
  2. SDCEP. Management of Acute Dental Problems: Acute pericoronitis (including erupting teeth in children)(2026年10月閲覧). リンク
  3. SDCEP. Management of Acute Dental Problems: Analgesia(2026年10月閲覧). リンク
  4. Lockhart PB, Tampi MP, Abt E, et al. Evidence-based clinical practice guideline on antibiotic use for the urgent management of pulpal- and periapical-related dental pain and intraoral swelling: A report from the American Dental Association. J Am Dent Assoc. 2019;150(11):906-921.e12. DOI
  5. Cope AL, Francis N, Wood F, Thompson W, Chestnutt IG. Systemic antibiotics for symptomatic apical periodontitis and acute apical abscess in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2024;5(5):CD010136. DOI
  6. 総務省消防庁. 救急安心センター事業(#7119)ってナニ?(2026年10月閲覧). リンク
  7. Chadha S, Troost JP, Shivers PL. Does the Penicillin Allergy Label Affect Outcomes of Complicated Odontogenic Infections? J Oral Maxillofac Surg. 2023;81(10):1301-1310. DOI
  8. SDCEP. Management of Acute Dental Problems: Pulpitis(2026年10月閲覧). リンク
  9. Carrasco-Labra A, Polk DE, Urquhart O, et al. Evidence-based clinical practice guideline for the pharmacologic management of acute dental pain in adolescents, adults, and older adults: A report from the American Dental Association Science and Research Institute, the University of Pittsburgh, and the University of Pennsylvania. J Am Dent Assoc. 2024;155(2):102-117.e9. DOI
  10. 第一三共. ロキソニン錠60mg 添付文書(KEGG MEDICUS). リンク
  11. あゆみ製薬. カロナール錠 添付文書(KEGG MEDICUS). リンク
  12. Shenoy ES, Macy E, Rowe T, Blumenthal KG. Evaluation and Management of Penicillin Allergy: A Review. JAMA. 2019;321(2):188-199. DOI

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