この記事の結論
「セルフホワイトニングに通っているんですけど、意味ありますか?」「ホワイトニングって、しみますか?」——診療中によく聞かれる質問です。先に答えを書きます。
- セルフホワイトニング(サロン)と、歯科のホワイトニングは別のものです。日本では、歯を漂白する過酸化物の薬は、歯科医師の診察が必要なものとして扱われています[1]。サロンの方法で歯そのものの色が明るくなるかを確かめた臨床研究は、私が調べた範囲では見つかりませんでした
- しみることは、あります。いちばん多い副作用で、半数前後の人が経験します。多くは軽く、一時的です[2][3]
- 後戻りは、します。1〜2年ほどは保たれるという報告が多いものの、時間とともに少しずつ戻ります[4][5]
- 決められた方法で行う限り、歯の表面が傷むという証拠ははっきりしていません[6]。ただし、歯科で使う高い濃度の薬では、歯の神経に炎症が起きることが報告されています[7]
- 白くなるのは、自分の歯だけです。詰め物や被せ物は白くなりません。神経を取った歯には、別の方法が必要です[8][9]
- ふだんからしみることが多い人、歯周病などの治療に取り組むのが難しい人には、私はおすすめしていません
- ちゃんと白くしたいなら、まず歯科で相談してください
この記事では、セルフホワイトニングと歯科のホワイトニングの違い、患者さんによく聞かれる質問への答え、やってはいけないことを、研究と診療の実感から書きます。文中の[番号]は記事末尾の参考文献です。
セルフホワイトニングと歯科のホワイトニング、何が違うのか
歯科のホワイトニングには、歯科医院で行うオフィスホワイトニングと、歯科で作ったマウスピースに薬を入れて自宅で行うホームホワイトニングがあります。両方を組み合わせる方法はデュアルホワイトニングと呼ばれます。
日本では、過酸化物を使って歯を漂白する薬は、「作用が穏やかとはいえず、歯科医師の診察と診断が必要」として、化粧品などではなく歯科の材料として扱われています[1]。そのため、歯科医院ではないセルフホワイトニングの店では、過酸化物ではない成分が使われます。
名前のとおり、施術は利用者が自分で行います。福岡県の消費生活センターが紹介している相談例でも、利用者が担当者の説明を受けながら自分で薬を塗り、専用の機械で光を当てていました[10]。
サロンの効果について、研究で分かっていること
正直に書くと、私はサロンの効果について、臨床での知見を持っていません。患者さんに「通っているけど意味ある?」と聞かれることが多いので、今回あらためて論文を調べました。
結論から言うと、サロンの方法(過酸化物ではない薬+光、自分で塗る)そのものを確かめた臨床研究は、医学論文のデータベース(PubMed)で私が探した範囲では見つかりませんでした。近い研究からは、次のことが分かっています。
- 過酸化物を含まない成分の効果は、弱いか、確認されていない。重曹やパパイン(パパイヤの酵素)など、過酸化物を含まない天然由来の成分を調べた研究をまとめた報告では、それだけで漂白効果が高まるという結果は出ませんでした[12]。過酸化物を使わない新しい成分(PAP)の市販ジェルも、歯科で使う濃度の薬(10%過酸化尿素)より効果が弱いという結果でした[13]。どちらも抜いた歯を使った実験室の研究で、人の口の中で確かめたものではありません
- 光には、白さを上乗せする力が確認されていない。歯科の漂白剤に光を当てる方法と当てない方法を比べた21件のランダム化比較試験をまとめた研究では、光を当てても白くなり方は変わりませんでした[14]。光だけを当てた場合は、薬と組み合わせた場合ほど白くなりませんでした[15]
これらを合わせると、サロンで期待できるのは、表面の着色が落ちて「もともとの歯の色に近づく」ところまでで、歯そのものの色を明るくするのは難しい、と私は考えています。表面の着色と歯そのものの色の違いは、ホワイトニング歯磨き粉で落ちるのは『汚れ』だけ。歯科医師が本音で書く、白くならない理由と削れるリスクで詳しく書きました。
ちゃんと白くしたいなら、歯科医院に来てください。これが歯科医師としての私の本音です。
契約にも注意してください。福岡県の消費生活センターは、セルフホワイトニングは利用者が自分で機器を使うため特定商取引法の対象外で、クーリング・オフや中途解約のルールが適用されない、と注意を呼びかけています。高額な違約金を求められた例もあります[10]。
患者さんによく聞かれること
「しみますか?」
しみることは、あります。ホワイトニングでいちばん多い副作用です。
ある研究グループが行った11件の臨床試験のデータをまとめた分析では、しみた人は、ホームホワイトニングで約51%、オフィスホワイトニングで約63%でした[2]。アメリカ歯科医師会も、始めたばかりの時期に、最大で3分の2の人に一時的なしみが出ることがある、としています[8]。
ただし、多くは軽く、一時的です。薬の濃度が高いほど、しみる人は増えます[3]。ホームとオフィスを比べると、しみる人の割合に差はないものの、しみる強さはホームのほうが弱いという分析があります(確からしさは低い)[11]。
実は、私自身はしみやすいので、ホワイトニングをしたことがありません。そして、ふだんからしみることが多い人には、ホワイトニングをおすすめしていません。
研究でも、もともとしみやすい人を集めた試験では、ホームホワイトニング中に少なくとも1日しみた人が78%いました。この試験では、しみを抑える薬(硝酸カリウムとフッ化物)を毎回先に使うと、41%に減りました[16]。知覚過敏用の歯磨き粉も、方法によってはしみを減らせたという報告があります[17]。しみやすいけれど、どうしても白くしたい方は、始める前に歯科で対策を相談してください。
ふだんからしみる方は、まず、しみる原因を診てもらうことが先です。しみるのは知覚過敏とは限りません(「冷たいものがしみる」は知覚過敏とは限らない。歯科医師が研究で確かめた、歯磨き粉の実力と神経を取らない理由)。
「後戻りしますか?」
します。後戻りしないと思っている方は多いのですが、ホワイトニングで明るくなった色は、時間とともに少しずつ戻ります。
ホームホワイトニングの経過を調べた24件の研究をまとめた報告では、色は1〜2.5年ほど保たれるとする研究が多く、もともとの変色が強いほど戻りやすいとされています[4]。日本で行われたランダム化比較試験では、2年間の経過で、どの方法でも白さは少しずつ減っていきました。そのうえで、オフィスとホームを組み合わせたほうが、オフィスだけより長持ちしました[5]。
一度白くしたら終わり、ではありません。白さを保つには、ときどき追加で行う(タッチアップ)ことが前提だと考えてください。
後戻りを防ぐために、できること
研究で効果が確かめられているのは、オフィスにホームを組み合わせることです[5]。ほかに、ときどきホームで追加する、色の濃い飲食物やたばこを控える、ホワイトニング歯磨き粉で表面の着色を落とす、といった方法は、理屈のうえでは役立つはずです。ただ、後戻りを防ぐ効果を直接確かめた質の高い研究は、私が探した範囲では見つかりませんでした。
「歯が傷みませんか?」
歯の表面(エナメル質)については、決められた方法で行う限り、傷むという証拠ははっきりしていません。
過酸化物でエナメル質の硬さが変わるかを調べた研究をまとめた分析では、硬さはわずかに下がるものの、臨床的に意味のある害の明確な証拠はなく、推奨どおりに使えば害は考えにくい、と結論づけています[6]。ただし、これは抜いた歯を使った実験室の研究です。
気をつけたいのは、歯の神経への影響です。過酸化水素は歯の表面から内側にしみ込み、15分ほどで神経まで届くとされています。しみるのも、神経の炎症が原因の一つと考えられています[8]。
人や動物の歯を調べた30件の研究をまとめた報告では、歯科医院で使う高い濃度の薬(35〜38%の過酸化水素)で、神経の表面に炎症や部分的な壊死(組織が死ぬこと)が起き、とくに人の前歯で目立ちました[7]。下の前歯にオフィスホワイトニングを行い、2日後に抜いて調べた研究でも、20%と35%のどちらの薬でも、神経の一部に壊死が見られました[18]。
一方で、ホワイトニングの後に神経が完全に死んでしまい(失活)、根の治療が必要になる人がどのくらいいるのかを、長い期間追った研究は見当たりませんでした。時間がたつと、歯の内側に新しい象牙質が作られる反応も見られます[7]。リスクがゼロではないことを知ったうえで、薬の濃度や回数を歯科医師と相談しながら進めてください。
「詰め物や被せ物も白くなりますか?」
なりません。漂白されるのは、自分の歯(天然の歯)だけです[8]。白い詰め物(レジン)も、漂白で色はわずかに変わりますが、見て分かるほどの変化ではありません[19]。
そのため、前歯に詰め物や被せ物がある方は、周りの歯だけが白くなり、色の差が目立つことがあります[8]。
順番は、ホワイトニングが先です。詰め物や被せ物は後から色が変わらないので、ホワイトニングで歯の色を整えてから、その色に合わせて作り直します。ホワイトニングの直後は、詰め物を歯にくっつける力(接着)が弱まります。52件の実験室の研究をまとめた分析では、その影響は2週間ほど続き、2〜3週間たつと差がなくなっていました[20]。ですから、ホワイトニングが終わってから2週間ほどは空けて、詰め物や被せ物を作ります。
これから前歯の詰め物や被せ物を作る予定があり、ホワイトニングにも興味がある方は、作る前に相談してください。
「神経を取った歯も白くなりますか?」
ここは誤解の多いところです。歯には、神経が生きている歯(生活歯)と、神経を取った歯や神経が死んでしまった歯(失活歯)があります。
失活歯は、歯の内側から黒っぽく変色していることが多く、ふつうのホワイトニング(歯の外側から薬を当てる方法)とは別の方法が使われます。歯の内側に薬を入れて漂白する「ウォーキングブリーチ」という方法です[8][9]。1本だけ黒っぽくなった歯は、神経が死んでいることがあり、この方法の対象になります。
高い濃度の薬を使った場合に、歯の根の外側が溶ける(外部吸収)ことがあるとの報告もあります。関係ははっきりしていないものの、慎重に行う治療です[9]。
「オフィスとホーム、どちらがいいですか?」
研究では、オフィスとホームで最終的な白さに大きな差はなく、しみる強さはホームのほうが弱いとされています(確からしさは低い)[11]。
私の勤務先では、両方を組み合わせるデュアルホワイトニングを勧めることが多いです。早く白くなり、効果を実感しやすいからです。
これは研究とも合っています。日本で行われたランダム化比較試験では、デュアルはオフィスだけより早く、強く白くなり、しみ方は変わりませんでした[21]。2年間の経過でも、デュアルのほうが長持ちしました[5]。
一方、ホームだけと比べた試験では、始めて1週間はデュアルのほうが白くなっていましたが、終わってみると白さに差はなく、しみる人の割合としみる強さはデュアルのほうが高くなりました[22]。研究をまとめた分析[23]や別の試験[24]でも、ホームだけと比べて、デュアルは白さが変わらず、しみやすいという結果です。
まとめると、早く白くしたい人にはデュアル、時間がかかってもしみるのをできるだけ避けたい人にはホーム、という選び方が、研究の結果とも合っていると私は考えています。
よくある誤解と、やってはいけないこと
1. セルフホワイトニングと歯科のホワイトニングを同じものだと思う
使う薬も、期待できることも違います。サロンに通っても白くならないと感じている方は、方法が違うことを知っておいてください。
2. 後戻りしないと思う
白さは少しずつ戻ります[4][5]。「一度やれば一生白い」と思って始めると、がっかりすることになります。
3. デメリットがないと思う
歯がしみる、歯ぐきがヒリヒリするといった副作用は、珍しくありません[2][3][8]。高い濃度の薬では、歯の神経に炎症が起きることもあります[7]。多くは一時的ですが、「何も起きない治療」ではありません。
4. 詰め物・被せ物や、神経を取った歯も同じように白くなると思う
白くなるのは、神経が生きている自分の歯だけです[8]。詰め物・被せ物は色が変わらず、神経を取った歯には別の方法が必要です[9]。
5. むし歯や歯周病を治さないまま、白さだけを求める
ホワイトニングの前には、変色の原因やむし歯・詰め物の状態を確かめる診察が大切です[8]。歯周病などの治療に取り組むのが難しい方には、私はホワイトニングをおすすめしていません。まずは歯と歯ぐきを健康にすることが先です。
今日からできる、ずぼらでも白さを保つ仕組み
- ホワイトニング中の食事制限は、完璧でなくていい。ホワイトニング中にコーヒー・紅茶・ワイン・コーラなどを控えた人と控えなかった人を比べた研究をまとめた報告では、白くなり方に差はありませんでした[25]。「コーヒーを我慢しなきゃ」で挫折するくらいなら、気にしすぎない方が続きます。ただし、通っている歯科の指示がある場合は、それに従ってください
- タッチアップは、定期検診と同じ日にしてもらう。後戻りは避けられないので、「白さが落ちてきたら行く」ではなく、検診の予約と一緒に確認してもらうと、思い出す手間がいりません
- 日常の着色は、歯磨き粉にまかせる。表面の着色を減らすのは、ホワイトニング歯磨き粉の得意分野です(ホワイトニング歯磨き粉で落ちるのは『汚れ』だけ)
- しみやすい人は、しみ対策を最初から計画に入れる。しみを抑える薬や知覚過敏用の歯磨き粉で、しみを減らせたという報告があります[16][17]。始めてから我慢するのではなく、始める前に相談してください
歯科で相談した方がいい人、おすすめしない人
歯科で相談した方がいい人
- 歯そのものの色を明るくしたい人
- ふだんから冷たいものがしみる人(先に、しみる原因を診てもらってください)
- むし歯や歯周病がある人、治療が途中の人
- 前歯に詰め物・被せ物がある人、神経を取った歯がある人(白くならない、色の差が出る)
- これから前歯の詰め物・被せ物を作る予定の人(先にホワイトニングをするかどうか)
- 1本だけ色が濃くなった歯がある人(神経が死んでいることがあり、ウォーキングブリーチの対象になります)
私がホワイトニングをおすすめしない人
- ふだんからしみることが多い人
- 歯周病などの治療に取り組むのが難しい人
歯科に行かなくてもよい場合
白さにこだわるわけではなく、コーヒーや紅茶の着色を少し減らしたい程度なら、ホワイトニング歯磨き粉で足りることもあります。ただし、歯そのものの色は変わりません(ホワイトニング歯磨き粉の記事)。
よくある質問
Q. ホワイトニング中は、コーヒーやカレーを我慢しないといけませんか?
A. 研究をまとめた報告では、色の濃い飲み物を控えなくても、白くなり方は変わりませんでした[25]。ただし、通っている歯科の指示がある場合は従ってください。
Q. ホワイトニングの効果は、どのくらいもちますか?
A. 1〜2.5年ほど保たれるとする研究が多いですが、少しずつ戻ります。もともとの変色が強いほど戻りやすいとされています[4]。オフィスに加えてホームも行うと長持ちしたという試験があります[5]。
Q. 光を当てると、早く白くなりますか?
A. 21件のランダム化比較試験をまとめた研究では、光を当てても当てなくても、白くなり方もしみ方も変わりませんでした[14]。
Q. しみやすいのですが、ホワイトニングはできませんか?
A. 私自身もしみやすく、ホワイトニングはしていません。しみることが多い方にはおすすめしていませんが、しみを抑える薬で減らせたという報告もあります[16]。まず、しみる原因を診てもらってください。
Q. セルフホワイトニングの回数券を勧められています。
A. セルフホワイトニングは特定商取引法の対象外で、クーリング・オフや中途解約のルールが適用されません。高額な違約金を求められた例もあります[10]。その場で決めず、いったん持ち帰ってください。
Q. ホワイトニングに健康保険は使えますか?
A. 基本的に使えません。見た目を整えるための処置なので、歯科のホワイトニングは自由診療です。
この記事を書いた人
現役の歯科医師です。歯科医師として5年以上、口腔外科を中心に診療しています。私自身はしみやすいので、ホワイトニングをしたことがありません。だからこそ、「しみる」「後戻りする」といったデメリットも含めて、研究で分かっていることをそのまま書きました。
参考文献
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