この記事の結論
「ホワイトニング歯磨き粉って、本当に白くなるんですか?」——正直に答えます。
- 落とせるのは、歯の表面についた「着色」だけ。 歯そのものの色を明るくする「漂白」は、市販の歯磨き粉ではできない。日本では漂白成分(過酸化物)を歯磨き粉に入れることが法律上できないから[11]
- 研究上、ホワイトニング歯磨き粉は普通の歯磨き粉より着色を落とす。ただし効果は小さく、色見本で平均1.8段階ほど。副作用のリスクは1.7倍[1]
- 強くこすれば白くなる、は間違い。 削れるのは歯と歯ぐきの方で、知覚過敏や歯ぐきの下がりにつながる
- 歯の色が気になるなら、歯磨き粉を替える前に「それは着色なのか、歯そのものの色なのか」を歯科で見てもらうのが最短。自己診断がいちばん危険
この記事では、「白くなる」に2種類あることを表で整理したうえで、研究で分かっている効果の大きさ、やりすぎの害、市販品と歯科専売品の違い、そして色の変化で受診すべきサインを書きます。文中の[番号]は記事末尾の参考文献です。
「白くなる」には2種類ある
診療室では、ホワイトニング歯磨き粉について質問されることは、実はあまりありません。聞かれるのは歯科医院のホワイトニングの話です。「費用はいくらですか」「後戻りしますか」「しみますか」。
つまり多くの人は、歯磨き粉のホワイトニングと歯科医院のホワイトニングを、なんとなく同じ「ホワイトニング」だと思っています。ここが最初のボタンの掛け違いです。
| 着色除去(クリーニング) | 漂白(ブリーチング) | |
|---|---|---|
| 何を変えるか | 歯の表面についた汚れ(コーヒー・茶・タバコ・ワインなどの色素) | 歯そのものの色(エナメル質・象牙質の内側の色素) |
| 主な手段 | 研磨剤でこすり落とす、化学成分で浮かせる・付着を防ぐ | 過酸化水素・過酸化尿素で色素を分解する |
| どこでできるか | 市販の歯磨き粉、歯科のクリーニング | 歯科医院だけ(オフィス/ホームホワイトニング) |
| 法律上の位置づけ | 化粧品・医薬部外品の「歯を白くする」(ブラッシング時の効能)[10] | 過酸化物の漂白材は医療用具(歯科材料)扱い[11] |
| 結果 | 本来の歯の色に戻る。それ以上は白くならない | 本来の色より明るくなる |
市販の歯磨き粉ができるのは、左の列だけです。「歯を白くする」と書いてある歯磨き粉は法律上まったく問題ありませんが、その意味は「ブラッシングで着色を落として本来の色に近づける」であって、漂白ではありません[10]。
なぜ日本の歯磨き粉には漂白成分が入っていないのか
厚生労働省は、過酸化物を使った歯面漂白材について「その作用が緩和とはいえず、歯科医師による口腔内の診査診断が必要」として、化粧品や医薬部外品ではなく医療用具(歯科材料)として扱うと通知しています[11]。だから、ドラッグストアで買える歯磨き粉には漂白成分が入っていません。
海外では低濃度の過酸化物を含む歯磨き粉やホワイトニングストリップが市販されている国もあり、研究でも登場します。日本の市販品の話を海外の研究結果でそのまま語れない理由がここにあります。
歯科医院で行う漂白(オフィス・ホームホワイトニング)と、お店で行うセルフホワイトニングの違い、「しみる」「後戻り」については、セルフホワイトニングと歯医者のホワイトニングは何が違う?「しみる」「後戻り」まで、歯科医師がよく聞かれる質問に研究で答えるで詳しく書きました。
研究で分かっている「効果の大きさ」
着色は落ちる。ただし小さく
ホワイトニング歯磨き粉と普通の歯磨き粉を比べたランダム化比較試験をまとめた2020年のメタ分析では、次の結果でした[1]。
- 着色の面積・濃さを示す指標(Lobene指数)で、ホワイトニング歯磨き粉の方が有意に減少(差は0.3〜0.4ポイント程度)
- 色見本(シェードガイド)で測った色の変化は、平均1.8段階分明るい方向(3研究、1,322人)
- 副作用のリスクは1.74倍(副作用の内訳はこのメタ分析の要旨には示されていません)
- 過酸化物を含むホワイトニングストリップと比べると、効果は劣る
- 証拠の確実性は「低〜中」
私の本音を先に書くと、私は患者さんにホワイトニング歯磨き粉を自分から勧めることはありません。「気休め」に近いと思っていました。研究を読んで言い直すなら、こうです。着色を落とす道具としては、たしかに普通の歯磨き粉より少し効く。でも歯そのものの色を変える道具ではないし、副作用も少し増える。 期待の大きさに対して、効果は小さい。ここを知らずに使うと、がっかりするか、やりすぎるか、どちらかになります。
効いているのは研磨だけなのか
ホワイトニング歯磨き粉の中身を整理した総説によると、主役は研磨剤です。表面の着色をこすり落とし、再付着を防ぎます[4]。それに加えて、脇役が2種類あります。
- 化学的な補助成分: ピロリン酸・ポリリン酸(ヘキサメタリン酸)・クエン酸・酵素など。着色を浮かせたり、色素が歯に付くのを防いだりします[4]
- 光学的な成分: 青い顔料(ブルーコバリン)を歯の表面に薄く残し、黄色みを打ち消して白く見せるもの。海外の研究では、1回磨いた直後に白さの指標が上がることが企業の臨床試験で示されています[5]。ただしこれは見え方の調整で、歯の色そのものは変わっていません。この総説と試験はいずれも歯磨き粉メーカーの研究者によるもので、日本の市販品にこの成分が入っているかは、私は確認できていません
つまり「研磨だけ」ではありませんが、研磨以外の成分も「着色を落とす・付きにくくする・白く見せる」の範囲で、漂白ではありません。
よくある誤解と、やってはいけないこと
誤解1. 歯科医院のホワイトニングと同じ効果がある
上の表の通り、別物です。予想以上の効果を期待して使い続け、「白くならない」と失望して、歯科にも来ない。この流れがいちばんもったいないと思っています。本来の色より白くしたいなら、それは歯科医院の仕事です。
誤解2. 泡が立つほど磨けている
歯磨き粉には発泡剤が入っていて、泡が立つと「磨けた気」になります。これは私の診療での印象ですが、泡で満足して磨き残す方は少なくありません。白さも同じで、スッキリ感と実際の効果は別です。
やってはいけない1. 強くこする、硬い毛でこする
「研磨剤入りなんだから、強くこすれば白くなる」。これが最も害の大きい思い込みです。
診療では、ゴシゴシ磨きが原因と思われる知覚過敏や、歯ぐきが下がって歯の根元が見えている方を、本当によく見ます。研究の側を正直に書くと、歯磨きと歯ぐきの下がりの因果関係は「決定的な証拠はない」とされています[7]。ただし同じレビューで、横に強くこする磨き方、硬い毛、回数や時間の多さが歯ぐきの下がりと関連していることは示されています[7]。研磨性の高い歯磨き粉と強いブラシ圧の組み合わせが歯の摩耗の主因で、力は2〜3ニュートン(歯ブラシの毛先が軽く開く程度)以下が目安、という総説もあります[8]。試験管内の研究では、ホワイトニング歯磨き粉が歯の表面を粗くし、硬さを下げる方向の結果が出ています[3]。
ついでに書いておくと、歯の根元がくさび状に削れる「くさび状欠損」も、以前は「ゴシゴシ磨きのせい」と説明されることが多かったのですが、今は磨き方だけでなく、飲食物や胃酸による酸、噛み合わせの力が歯の根元に集中すること(アブフラクション)も関わる多因子の現象と考えられています。噛み合わせの力との関連は、69の研究を調べたレビューでも支持されています[6]。「歯ブラシだけが悪者」ではない、というのが今の見方です。
それでも、因果が証明されていなくても、私は防御的に考えます。削れた歯と下がった歯ぐきは戻りません。 効果が小さいものに、戻らないリスクを賭ける理由はない。使うなら、普通の力で、普通の回数で。
やってはいけない2. 「歯の色がおかしい」を歯磨き粉で何とかしようとする
1本だけ黒ずんでいる、帯状に変色している、白い斑点や茶色い点がある。これらは着色ではなく、神経の問題やむし歯、生まれつきの変色の可能性があります。歯磨き粉では落ちませんし、落ちないまま時間が過ぎます。詳しくは受診の目安に書きます。
市販の歯磨き粉と、歯科医院専売の歯磨き粉は何が違うのか
患者さんにも、実は歯科医師同士でも、よく話題になります。研究で調べたうえでの答えはこうです。
法律上は、同じ土俵です。 どちらも化粧品か医薬部外品で、名乗れる効能の範囲は同じ[10]。フッ素の上限も同じ1500ppmです[9]。「専売だから白くなる」「専売だから効く」という根拠は、私が調べた範囲では見つかりませんでした。
違いがあるとすれば、処方の傾向と売り方です。歯科専売品は、研磨剤と発泡剤を控えめにしたもの、フッ素濃度を1450ppmと明記したもの、味を控えめにしたものが多い。強い訴求のパッケージではなく、歯科医院が患者さんの状態を見て選んで渡す、という流通の違いです。逆に言えば、市販品でも低研磨・フッ素1450ppmのものを選べば、中身の考え方は近づきます。
私自身は歯科医院で扱っている歯磨き粉を使っていますが、それは「専売だから白くなる」からではなく、「研磨が穏やかでフッ素濃度がはっきりしている」からです。
今日からできる、サボっても効く仕組み
1. 歯磨き粉を替える前に、「着色か、色か」を歯科で見てもらう
これがいちばん効率がいい一手です。着色なら歯科のクリーニングで一度落とせて、その後の維持に歯磨き粉が意味を持ちます。歯そのものの色なら、歯磨き粉を何本買っても変わりません。定期検診のついでに「歯の色が気になる」と一言伝えるだけで済みます。
2. 使うなら「低研磨」を「普通の力」で
ホワイトニング歯磨き粉を使うなら、研磨剤だけで落とすタイプより、着色を浮かせて付きにくくする成分(ピロリン酸・ポリリン酸など)を組み合わせたものを[4]、普通の力・普通の回数で。電動歯ブラシなら、押しつけ防止のセンサー付きが安全側です[7][8]。「効果が小さいものを、害が出ない範囲で使う」が原則です。
一つ挙げるなら、ドラッグストアで買えるライオンのクリニカPRO plus ホワイトニングです。着色を浮かせる清掃助剤(ポリアクリル酸)とポリリン酸を組み合わせ、フッ素は1450ppm。効能として認められているのは「歯を白くする」で、メーカー自身が「着色汚れによる黄ばみ」と注釈を付けています。つまり、この記事で書いてきた「着色除去」の範囲を正直に名乗っている製品です。念のため書くと、この製品にも清掃剤(研磨成分)は入っています。「研磨ゼロ」ではなく「研磨に頼りすぎない」設計だと理解してください。そして、これを使っても歯そのものの色は変わりません。着色を落として本来の色に戻す、それだけです。
※リンク先はシリーズ共通のページです。「plus ホワイトニング」を選んでください。
3. 着色を「作らない」側を仕組みにする
落とすより、付けない方が楽です。コーヒーや紅茶、赤ワインの後に水を一口飲む。喫煙については、英国の全国調査で、自分の歯の着色を中等度以上と感じている人が喫煙者では28%、非喫煙者では15%と、およそ2倍でした[12]。着色だけを理由に禁煙を勧めるつもりはありませんが、着色の要因としては最も大きい部類です。着色の付着を防ぐ成分(ポリリン酸など)入りの歯磨き粉は、この「付けない」側の補助になります[4]。
4. 本来の色より白くしたいなら、歯科のホワイトニングの話をする
費用・後戻り・しみるかどうか。診療でいちばん聞かれるこの3つは、市販品の話ではなく歯科のホワイトニングの話です。別の記事で書きます。
個人を責めるな、仕組みを責めよう。
受診の目安
自己診断がいちばん危険
歯の色に関しては、私は「行かなくてよい場合」を書きません。理由は簡単で、着色なのか、歯そのものの変色なのかは、鏡では見分けがつかないからです。おかしいと思ったら、歯科医院で見てもらってください。
特に早めに見てほしい色の変化
- 1本だけ黒ずんできた、灰色っぽくなった(神経が死んでいる可能性)
- 歯の表面に白い斑点や茶色い点が出てきた(初期のむし歯の可能性)
- 詰め物・被せ物の縁が黒ずんできた(段差やむし歯の再発の可能性)
- 帯状・縞状の変色がある(生まれつきの変色や薬の影響の可能性。歯磨き粉では落ちない)
- 歯磨き粉を替えてからしみるようになった
よくある質問
Q. ホワイトニング歯磨き粉を毎日使うと歯が削れますか?
A. 普通の力で使う分には、通常の歯磨き粉と大きく変わらないとされています。問題は強くこすること、硬い毛、回数の多さで、そちらが歯ぐきの下がりと関連しています[7]。試験管内では表面が粗くなる結果もあるので[3]、低研磨のものを普通の力で。
Q. 海外製の過酸化水素入り歯磨き粉を個人輸入すれば白くなりますか?
A. 日本では過酸化物の漂白材は歯科医師の診査が必要な医療用具の扱いで[11]、自己判断での使用はおすすめしません。しみる・歯ぐきを傷めるなどの副作用は歯科で管理してこそ安全に使えます。
Q. 「歯科医院専売」の歯磨き粉なら白くなりますか?
A. 法律上の区分も効能の範囲も市販品と同じで、フッ素の上限も同じです[9][10]。専売だから白くなるという根拠はありません。違いは研磨剤や発泡剤の控えめさなど、処方の傾向です。
Q. 着色が気になります。まず何をすべきですか?
A. 歯科でクリーニングを受けて一度落とし、その後の維持に低研磨のホワイトニング歯磨き粉と、着色を付けない習慣(飲んだ後の水など)を組み合わせるのが順番です。落ちない場合は着色ではない可能性があるので、診てもらってください。
Q. ホワイトニング歯磨き粉に替えてから、しみるようになりました。
A. いったん使用をやめて、しみるのが続くなら受診してください。しみる原因は歯磨き粉だけでなく、むし歯や歯のひび割れ、歯ぐきの下がりのこともあります。知覚過敏用の歯磨き粉がどこまで効くかは、「冷たいものがしみる」は知覚過敏とは限らない。歯科医師が研究で確かめた、歯磨き粉の実力と神経を取らない理由で研究をもとに書きました。
この記事を書いた人
現役の歯科医師です。歯科医師として5年以上、地域の歯科医院で日々患者さんを診ています。正直に言うと、ホワイトニング歯磨き粉を自分から勧めたことはありません。この記事を書くために研究を読み直して、「着色除去としては少し効く」と、自分の思い込みを一つ修正しました。そういう経緯ごと書いています。
この記事で紹介した歯磨き粉のリンクから購入されると当サイトに紹介料が入りますが、勧めないケース(強くこする使い方、歯そのものの色を変える目的)は勧めないと書いています。
参考文献
- Devila A, Lasta R, Zanella L, Agnol MD, Rodrigues-Junior SA. Efficacy and Adverse Effects of Whitening Dentifrices Compared With Other Products: A Systematic Review and Meta-analysis. Oper Dent. 2020;45(2):E77-E90. DOI
- Casado BGS, Moraes SLD, Souza GFM, et al. Efficacy of Dental Bleaching with Whitening Dentifrices: A Systematic Review. Int J Dent. 2018;2018:7868531. DOI
- Jamwal N, Rao A, Shenoy R, Pai M, Ks A, Br A. Effect of whitening toothpaste on surface roughness and microhardness of human teeth: a systematic review and meta-analysis. F1000Res. 2022;11:22. DOI
- Joiner A. Whitening toothpastes: a review of the literature. J Dent. 2010;38 Suppl 2:e17-e24. DOI
- Tao D, Smith RN, Zhang Q, et al. Tooth whitening evaluation of blue covarine containing toothpastes. J Dent. 2017;67S:S20-S24. DOI
- Duangthip D, Man A, Poon PH, Lo ECM, Chu CH. Occlusal stress is involved in the formation of non-carious cervical lesions. A systematic review of abfraction. Am J Dent. 2017;30(4):212-220. PubMed
- Heasman PA, Holliday R, Bryant A, Preshaw PM. Evidence for the occurrence of gingival recession and non-carious cervical lesions as a consequence of traumatic toothbrushing. J Clin Periodontol. 2015;42 Suppl 16:S237-S255. DOI
- Kumar S, Gopalkrishna P, Syed AK, Sathiyabalan A. The Impact of Toothbrushing on Oral Health, Gingival Recession, and Tooth Wear—A Narrative Review. Healthcare (Basel). 2025;13(10):1138. DOI
- 厚生労働省. フッ化物を配合する薬用歯みがき類の使用上の注意について(薬生薬審発0317第1号・薬生安発0317第1号、平成29年3月17日). リンク
- 厚生労働省. 化粧品の効能の範囲の改正について(薬食発0721第1号、平成23年7月21日). リンク
- 厚生労働省. 過酸化物を用いた歯面漂白材の取扱いについて(医薬審発第0206001号・医薬監麻発第0206001号、平成14年2月6日). リンク
- Alkhatib MN, Holt RD, Bedi R. Smoking and tooth discolouration: findings from a national cross-sectional study. BMC Public Health. 2005;5:27. DOI



コメント