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詰め物・被せ物が取れたら、捨てずに持って歯科へ。歯科医師が本音で書く、受診までにやることと「付け直し・作り直し」の分かれ目

詰め物・被せ物が取れたら、捨てずに持って歯科へ。歯科医師が本音で書く、受診までにやることと「付け直し・作り直し」の分かれ目 歯のトラブル

この記事の結論

「歯が欠けたみたいなんです」——夜や週末に、こういう電話をよくいただきます。話を聞くと、欠けたのではなく詰め物や被せ物が取れていた、ということが少なくありません。先に答えを書きます。

  • しみたり痛んだりしなければ、急ぐ必要はありません[1]。数日〜1週間以内に予約を取ってください。痛みがある、前歯で見た目が困る、子どもの乳歯、の場合は早めに
  • 取れた詰め物・被せ物は、捨てずに持って行ってください[2]
  • 自分で接着剤でつけるのはやめてください。付け直せたはずのものが、付け直せなくなることがあります
  • 「付ければ終わり」とは限りません。詰め物をやり直す理由で最も多いのは、その下や境目にできるむし歯(二次むし歯)だと報告されています[3]。取れた原因を調べて、作り直しになることもよくあります
  • 何週間も放っておくと、歯が少しずつ動いて、元の被せ物が入らなくなることがあります[4][5][6][7]

この記事では、受診までにやること・やってはいけないこと、付け直しと作り直しの分かれ目、材料ごとの持ちの違いを、研究の数字と診療の本音で書きます。文中の[番号]は記事末尾の参考文献です。

まず、「取れた」のか「欠けた」のか

電話で「欠けた」とおっしゃる方の多くは、実際には詰め物や被せ物が取れています。口から出てきたものが、銀色や金色の金属、白くて硬いかけら、歯の形をしたかぶせ物なら、詰め物・被せ物の可能性が高いです。

ただ、自分の歯そのものが欠けていることもあります。どちらにしても、次に書く「受診までにやること」は同じです。

受診までにやること

  1. 取れたものを保管する。軽く水で洗い、ティッシュに包まず、小さな容器やチャック付きの袋に入れて保管します。ティッシュに包むと、そのまま捨ててしまうことが多いからです。イギリスの公的医療機関の案内でも、取れた被せ物は保管して歯科に持って行くよう勧めています[2]
  2. 予約の電話で、状況を伝える。「詰め物(被せ物)が取れた」「痛みやしみがあるか」「いつ取れたか」を伝えると、予約の優先度を判断してもらえます
  3. 取れた側では、なるべく噛まない。残った歯は、詰め物がない分だけ薄く、欠けやすくなっています
  4. ガムやキャラメルなど、くっつく食べ物は避ける
  5. 歯磨きは続ける。取れた部分も、やわらかい力で磨きます。汚れがたまると、むし歯が進みやすくなります

やってはいけないこと

1. 取れたものを捨てる

診療では、取れたものを捨ててしまった、という方が本当によくいらっしゃいます。付け直せる状態だった場合でも、現物がなければ作り直すしかありません。

2. 瞬間接着剤などで、自分でつける

家庭用の接着剤は、口の中で使うためのものではありません。ずれた位置で固まると、かみ合わせが狂います。はみ出した接着剤を取り除く手間もかかり、付け直せたはずのものが付け直せなくなることがあります。

3. 「付ければ終わり」と思う

取れた詰め物を付け直せば元どおり、と考える方はよくいます。でも、詰め物をやり直す理由で最も多いのは、その下や境目にできる二次むし歯だと報告されています[3]。私の実感でも、インレー(部分的な詰め物)や全部を覆う金属の被せ物が取れるときは、下に二次むし歯ができていることが多いと感じます。この場合は、むし歯を取り除いて作り直すことになります。

4. 何週間も放っておく

痛くないからと放っておくと、別の問題が起きます。歯は、隣や向かいの歯と接していることで位置が保たれています。詰め物や被せ物がなくなって接点が失われると、隣の歯が倒れ込んできたり、かみ合う相手の歯が伸びてきたりして、かみ合わせが乱れることがあります。

研究の数字も正直に書いておきます。どれも「歯を失ったすき間」を調べた研究です。

  • 研究のまとめでは、周りの歯の動きは多くの場合限られていて、平均で2mm以内でした。ただし確からしさは「非常に低い」とされています[4]
  • すき間の両隣の歯を何年か追った研究では、動きは抜歯から2年間が最も大きく、その後はゆっくり小さくなっていました[5]
  • 7年近く追った研究でも、すき間が縮んだのは多くの人で1mm以下、かみ合う歯の伸び出しは99%の人で1mm以下でした[6]
  • かみ合う相手のいない奥歯を10年以上追った研究では、伸び出しは平均0.8mmでした。歯周病のある歯ほど、大きく動いていました[7]

研究では、動きは思ったより小さいという結果でした。一方で、私の実感では、何年も放っておいた歯は、もっと大きく動いていることがあります。歯周病のある歯ほど動いていたという結果[7]を考えると、歯ぐきの状態によって差が大きいのかもしれません。

そして、被せ物は非常に精密に作られているので、歯がわずかに動いただけでも、元の被せ物が入らなくなることがあります。何週間も放っておいた後だと、付け直しが難しくなるのはこのためです。

付け直すか、作り直すか。歯科医師の本音

取れたものを付け直せるかどうかは、診察しないと分かりません。付け直せる割合を示した研究も見つかりませんでした。そのうえで、私の考えを正直に書きます。

  • 取れた原因が二次むし歯なら、作り直しになります。むし歯を残したまま付け直しても、また取れるか、むし歯が進むだけです
  • 私は、迷う場合は作り直した方が無難だと考えています。取れたということは、どこかに原因があるからです
  • 一方で、作ったばかりの被せ物は、まず付け直しを考えるのが一般的です

最後の点には、保険の決まりも関係しています。多くの保険の被せ物では、入れた日から2年以内に同じ医院で作り直したり付け直したりする費用は、最初に算定した管理料に含まれることになっています[8]。医院側の持ち出しになるので、作って間もない被せ物は、まず付け直せないかを考えることになります。歯科医院の側には、こうした事情もあります。

また、自費で作った詰め物・被せ物が取れた場合の付け直しは、保険の対象になりません[9]。自費の被せ物が取れたら、作った医院に相談してください。

材料で、持ちはどう違うのか

作り直しになったとき、「どの材料で作るか」は大事な選択です。材料の種類と保険の範囲は、日本歯科医師会の解説も参考になります[10]。研究で分かっている持ちの目安を、まとめました。

材料ごとの「持ち」の目安

研究ごとに期間や数え方が違うため、数字の単純な比較はできません

セラミックの被せ物

二ケイ酸リチウム・一体型

自費

98.5%

5年後に使えている[11]

割れ・欠けは少なめ

表面に焼き付けるタイプより割れ・欠けが少ない[11]

ジルコニアの被せ物

一体型

自費

96.8%

5年後に使えている[11]

割れ・欠けは少なめ

一体型は割れ・欠けが少ない[11]

金属焼付けセラミック

メタルボンドの被せ物

自費

97.1%

5年後に使えている[11]

―

セラミックの詰め物

インレー・アンレー

自費

91%

10年後に使えている[12]

5年後は92〜95%

割れ・欠け 4%神経の問題 3%

金合金の被せ物

部分的に覆うタイプ

自費

91.8%

約23年後に使えている[13]

約15年後は92.6%

神経の問題 8.8%二次むし歯 4.8%外れる 2.0%

CAD/CAM冠

樹脂のブロックを削り出した被せ物

保険

82.9%

約2年半、トラブルなし[14]

奥歯では3年でトラブルなし49.5%・使えている86.5%[15]

外れる(最多)

神経の残っている歯で起きやすい[14][15]

保険の金属の被せ物

金銀パラジウム合金(奥歯の第一大臼歯)

保険

92.5%

5年後に使えている[16]

10年後80.8%・20年後54.0%

抜歯 22.6%外れる 21.8%歯根が割れる 18.8%むし歯 15.8%

うまくいかなかった被せ物の理由の内訳

使えている=手直しをしながらでも、口の中で使い続けられている割合 / トラブルなし=一度も問題が起きていない割合。セラミックなどは5年前後の研究が中心で、20年の成績はまだ多くありません

保険の金属の被せ物は、全国20の歯科医院で奥歯(第一大臼歯)の603本を追った日本の研究で、平均20年ほど使えていたと報告されています[16]。セラミックなどは5年前後の研究が中心なので、20年後の数字と並べて「どちらが長持ちか」を決めることはできません。

取れる原因は、材料によって違う

「取れるのは、たいてい下のむし歯のせい」という実感は、研究でも半分は当たっています。金属や白い詰め物をやり直す理由を調べた研究では、材料を問わず二次むし歯が最も多いと報告されています[3]。奥歯の白い詰め物(コンポジットレジン)でも、失敗の主な理由はむし歯と破折でした[17]。

ただ、被せ物や部分的な詰め物まで材料ごとに見ると、弱点は違います。

  • セラミック: 割れ・欠けが最も多い[12][13]
  • 金合金: 神経の問題と二次むし歯が多く、外れることは少ない[13]
  • 保険のCAD/CAM冠: むし歯より、外れること(脱離)が最も多い。神経の残っている歯で起きやすいという報告もあります[14][15]
  • 保険の金属の被せ物: 歯を抜くことになった、外れた、歯の根が割れた、が上位で、むし歯は15.8%でした[16]

つまり、保険のCAD/CAM冠が取れた場合は、むし歯がなくても外れていることがあります。この場合は、付け直しで済むこともあります。

取れたまま放っておいて、むし歯が進んだり歯が割れたりすると、最後は抜歯になることもあります。歯を失う原因と、抜歯に至るまでの経過は、別の記事に書きました。

→ 歯を失う原因の1位は歯周病。「なんとか残せませんか?」に歯科医師が本音で答える、抜歯に至る3つの経過

私がセラミックを勧める理由

費用は、何をするかによって大きく変わります。そのうえで、私は、見た目や費用とは関係なく、医療として最善なのはセラミックだと考えています。

研究を見ても、セラミックの被せ物(二ケイ酸リチウムの一体型)は、5年で98.5%と、比べた材料の中で最も高い成績でした[11]。セラミックの部分的な詰め物も、10年で91%が使えています[12]。この考えと研究は、矛盾しません。

一方で、金合金も長く持つことが分かっていて、20年以上の成績はセラミックの詰め物とほぼ同じでした[13]。保険の金属の被せ物も、平均で20年ほど使えていました[16]。材料の選択は、歯の状態やかみ合わせ、費用も含めて、担当の歯科医師と相談して決めてください。

受診の目安

受診までの日数を決めた研究やガイドラインは、見つかりませんでした。ただ、スコットランドの歯科のガイダンスでは、痛み止めで治まらない痛みがあれば急ぎの受診、痛みが治まる・大きくなければ急がない受診、と痛みの有無で分けています[1]。以下は、これと同じ考え方に立った、私の臨床での目安です。

しみない・痛くない
数日〜1週間以内に予約
週末・連休・旅行中で、症状がない
帰ってからで大丈夫
しみる・痛い
早めに受診
前歯で、見た目が困る
早めに受診
子どもの乳歯
早めに受診

痛みや腫れがある場合は、取れたこととは別に、むし歯が深く進んでいる可能性があります。

よくある質問

Q. 取れた詰め物は、その日に付け直してもらえますか?

A. 状態によります。付け直せる場合はその日に終わることもありますが、下にむし歯があれば、むし歯を取って型を取り、作り直すので数回の通院になります[3]。

Q. 保険の被せ物が取れたら、費用はかかりますか?

A. 付け直しか作り直しか、何を使うかで変わります。入れてから2年以内で、同じ医院で作り直す場合などは、費用の扱いが異なることがあります[8]。まずは作った医院に相談してください。

Q. 自費の被せ物が取れたら、保険で付け直せますか?

A. 自費で作ったものの付け直しは、保険の対象になりません[9]。作った医院に相談してください。

Q. 旅行先で取れました。現地の歯科に行くべきですか?

A. しみたり痛んだりしなければ、帰ってからで大丈夫です。取れたものはなくさないように保管してください[2]。痛みがある場合は、現地で診てもらってください。

Q. 市販の仮の詰め物を使ってもいいですか?

A. 薬局で買える応急用の仮詰めキットで穴をふさぐのは、スコットランドの歯科のガイダンスでも、受診までのつなぎとして挙げられています[1]。使った場合も、必ず受診してください。瞬間接着剤などの家庭用の接着剤は使わないでください。

Q. 取れた詰め物を飲み込んでしまいました。

A. 食道に入った場合は、多くは便と一緒に出てきます。まれに気管に入ることがあり、むせて咳が止まらない、息苦しい、ゼーゼーする、といった呼吸の症状があれば、すぐに医療機関を受診してください。スコットランドの歯科のガイダンスでも、吸い込んだ疑いがあれば、すぐに救急につなぐよう定めています[1]。症状はなくても気になる場合は、呼吸器内科で相談してください。

この記事を書いた人

現役の歯科医師です。歯科医師として5年以上、地域の歯科医院で日々患者さんを診ています。「歯が欠けた」という電話の多くは、詰め物や被せ物が取れたものです。慌てなくていい場合と、急いだ方がいい場合を知っておくだけで、余計な心配も、手遅れも減らせます。

参考文献

  1. Scottish Dental Clinical Effectiveness Programme (SDCEP). Management of Acute Dental Problems: Cracked, fractured, loose or displaced tooth fragments and restorations(2026年10月閲覧). リンク
  2. NHS 111 Wales. Lost Filling or Crown. リンク
  3. Mjör IA, Moorhead JE, Dahl JE. Reasons for replacement of restorations in permanent teeth in general dental practice. Int Dent J. 2000;50(6):361-366. DOI
  4. Faggion CM Jr, Giannakopoulos NN, Listl S. How strong is the evidence for the need to restore posterior bounded edentulous spaces in adults? Grading the quality of evidence and the strength of recommendations. J Dent. 2011;39(2):108-116. DOI
  5. Gragg KL, Shugars DA, Bader JD, Elter JR, White BA. Movement of teeth adjacent to posterior bounded edentulous spaces. J Dent Res. 2001;80(11):2021-2024. DOI
  6. Shugars DA, Bader JD, Phillips SW Jr, White BA, Brantley CF. The consequences of not replacing a missing posterior tooth. J Am Dent Assoc. 2000;131(9):1317-1323. DOI
  7. Christou P, Kiliaridis S. Three-dimensional changes in the position of unopposed molars in adults. Eur J Orthod. 2007;29(6):543-549. DOI
  8. しろぼんねっと. 歯科診療報酬点数表(令和8年) M000-2 クラウン・ブリッジ維持管理料. リンク
  9. しろぼんねっと. 歯科診療報酬点数表(令和8年) 第12部 歯冠修復及び欠損補綴 通則. リンク
  10. 日本歯科医師会. テーマパーク8020「差し歯・冠」(執筆: 馬場一美). リンク
  11. Pjetursson BE, Pitta J, Balet A, et al. A Systematic Review and Meta-analysis Evaluating the Survival, Failure, and Complication Rates of Metal-Ceramic, Veneered, and Monolithic All-Ceramic Tooth-Supported Single Crowns—Part 1. Int J Prosthodont. 2026;39(3):308-324. DOI
  12. Morimoto S, Rebello de Sampaio FB, Braga MM, et al. Survival Rate of Resin and Ceramic Inlays, Onlays, and Overlays: A Systematic Review and Meta-analysis. J Dent Res. 2016;95(9):985-994. DOI
  13. Krug R, Droste L, Schreiber C, et al. Long-term performance of ceramic in/-onlays vs. cast gold partial crowns—a retrospective clinical study. Clin Oral Investig. 2024;28(5):298. DOI
  14. Fuchida A, Nishio F, Higashinakao T, et al. Clinical survival of CAD-CAM composite resin crowns in anterior and posterior teeth: A four-year retrospective cohort study. J Prosthodont Res. 2026 (online ahead of print). DOI
  15. Inomata M, Harada A, Kasahara S, et al. Potential complications of CAD/CAM-produced resin composite crowns on molars: A retrospective cohort study over four years. PLoS One. 2022;17(4):e0266358. DOI
  16. Yoshino K, Ito K, Kuroda M, Sugihara N, Sekine H. Survival Rate of Metal Crowns Covered by Public Health Insurance System in Japan: A Quality-of-Care Perspective. Bull Tokyo Dent Coll. 2024;65(4):65-73. DOI
  17. Opdam NJ, van de Sande FH, Bronkhorst E, et al. Longevity of posterior composite restorations: a systematic review and meta-analysis. J Dent Res. 2014;93(10):943-949. DOI

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