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保険と自費、歯科医師はどう考えているか。「自費を勧められた」ときに聞いておきたいこと

保険と自費、歯科医師はどう考えているか。「自費を勧められた」ときに聞いておきたいこと 歯医者のホンネ

この記事の結論

「自費を勧めるのは、結局お金儲けがしたいからでしょ?」——歯科医師が、患者さんからよく言われる言葉です。先に答えを書きます。

  • 保険でも、必要な治療は最低限十分にできます。国も、必要かつ適切な医療は基本的に保険の対象にしているとしています[1]
  • 保険と自費の違いは、大きく2つです。使える材料と、かけられる時間です
  • 材料: 保険は金属(いわゆる銀歯)や、樹脂の白い被せ物(CAD/CAM冠)が中心です[2]。自費では、セラミックやジルコニア、金合金などを選べます[3]
  • 時間: 私は、自費のいちばんの強みは、材料よりも「時間をかけられること」だと考えています
  • 自費でも、合わないことはあります。自費だから完璧、ではありません
  • 自費を勧められたら、「口全体で考えた計画か」「この歯は長く持つ見込みがあるか」を聞いてください
  • 説明が足りないと感じたら、ほかの歯科医師の意見を聞いてもかまいません

この記事では、保険と自費の違い、材料ごとの特徴、研究と学会の見解、私が自費を勧める場面と勧めない場面、自費を勧められたときに聞いておきたいことを書きます。文中の[番号]は記事末尾の参考文献です。

「自費を勧めるのは金儲けでしょ?」と言われる理由

歯科医院で自費の治療を勧められると、「高いものを売りつけられているのでは」と感じる方は少なくありません。実際に、そう言われることはよくあります。

この気持ちは分かります。だからこそ、保険と自費が何で違うのかを、歯科医師の側から正直に書きます。

保険と自費、何が違うのか

保険は「必要な治療」を受けるための仕組み

日本では、国民皆保険のもとで、必要かつ適切な医療は基本的に保険の対象とされています[1]。保険の治療は、国が決めたルールと材料の中で行います。

保険の治療と保険外の治療を一緒に受けられるのは、国が決めたルールの範囲に限られます。歯科では、前歯の金合金など、金属床の総入れ歯、子どものむし歯の管理などがそれにあたります(選定療養)[1]。

違い1: 使える材料

まず、被せ物に使う材料を簡単に説明します。

  • 金銀パラジウム合金: 金・銀・パラジウムなどを混ぜた金属で、いわゆる「銀歯」です。保険の被せ物の代表です[3][4]
  • CAD/CAM冠: コンピューターで設計し、樹脂(プラスチック)に細かい粒を混ぜた材料(コンポジットレジン)のブロックから削り出す、白い被せ物です。保険で使えます[2][5]
  • セラミック(二ケイ酸リチウム): ガラスを主成分とするセラミックの一種です。透明感があり、天然の歯に近い見た目になります。「e.max(イーマックス)」が代表的な製品です[6]
  • ジルコニア: セラミックの一種で、とくに硬く割れにくい材料です。整形外科では人工股関節にも使われています[3]
  • 金合金: 金を主成分とする金属です。奥歯の金属の被せ物に金合金を使うと、保険の対象外になります[3]
  • メタルボンド(金属焼付けセラミック): 金属の枠の表面にセラミックを焼き付けた被せ物です。自費の材料で、研究ではセラミックの比較相手としてよく使われます[3][6]

樹脂とセラミックの違いも知っておいてください。樹脂はセラミックより柔らかく、水を吸う性質があるため、長く使うとすり減ったり、変色したりすることがあります[3]。

被せ物の材料、それぞれの特徴

費用は医院や地域によって違うため、この表には載せていません

金銀パラジウム合金

いわゆる銀歯/見た目は銀色

保険
よいところ

奥歯の被せ物で、平均約20年もったという日本の研究がある[4]

弱いところ

目立つ。だめになる理由として、被せ物の下のむし歯や、歯の根が割れることが多い[4]

CAD/CAM冠

樹脂の白い被せ物

保険
よいところ

前歯から奥歯まで、保険で白い歯にできる[2][7]

弱いところ

樹脂なので変色しやすい[8][3]。外れやすい[9][10]。歯ぎしりのある人などには推奨されない[7]

セラミック

二ケイ酸リチウム(e.maxなど)/白く自然

自費
よいところ

一体型の被せ物は、5年で98.5%が使えていた[6]

弱いところ

費用がかかる

ジルコニア

硬いセラミック/白い

自費
よいところ

強く、奥歯にも使える[3]。一体型の被せ物は、5年で96.8%が使えていた[6]

弱いところ

費用がかかる

金合金

金色

自費

前歯は保険と組み合わせられる場合あり[1]

よいところ

長く持つことが分かっている[11]

弱いところ

目立つ。費用がかかる

材料ごとの持ちの詳しい数字は、詰め物・被せ物が取れたら、捨てずに持って歯科へ。歯科医師が本音で書く、受診までにやることと「付け直し・作り直し」の分かれ目にまとめました。

研究と学会は、何と言っているか

「保険か自費か」を直接比べた研究はありません。保険と自費は日本の制度の分け方で、海外の研究は材料どうしの比較になるからです。そのうえで、材料について分かっていることを紹介します。

  • 樹脂を含む被せ物は、セラミックよりトラブルが多い。樹脂とセラミックを混ぜた材料(CAD/CAM冠の材料に近いもの)の研究をまとめた分析では、被せ物として使った場合、セラミックより合併症が多く、被せ物の第一選択とは言えない可能性があると結論づけています[12]
  • セラミックの被せ物は、金属を使った被せ物と同じくらい長持ちする。64の研究をまとめた分析では、5年後に使えていた割合は、二ケイ酸リチウムの一体型が98.5%、ジルコニアの一体型が96.8%で、メタルボンド(97.1%)と同等でした[6]
  • 日本補綴歯科学会のガイドラインも、セラミックを勧めてよいとしています。同学会の診療ガイドライン(2008年)は、セラミックの被せ物がメタルボンドより「有効である」という根拠は少ないとしつつ、持ちは同程度で、見た目や患者さんの満足度が高いことから、セラミックを勧めてもよいとしています。金属を使う被せ物の欠点として、歯ぐきが黒ずむことや、金属アレルギーの原因になりうることも挙げています[13]
  • 日本の学会は、CAD/CAM冠の弱点もはっきり書いています。日本補綴歯科学会の指針の解説は、CAD/CAM冠について「エビデンス無きまま保険収載されたともいわれ」、外れるなどのトラブルが散見されたこと、材料の強さや接着の性能が金属の被せ物より低いことを挙げています[5]。日本歯科医学会も、歯ぎしりや食いしばりで歯がすり減っている人などには、CAD/CAM冠を推奨できないとしています[7]
  • 材料による差は、昔より小さくなっています。2000年代の研究をまとめた報告でも、被せ物の種類による持ちの差は比較的小さいとされていました[14]。当時のセラミックは奥歯で割れやすいという弱点がありましたが[15]、その後の材料(二ケイ酸リチウムやジルコニアの一体型)では、奥歯でも同等の成績になっています[6]

一方で、保険の金属の被せ物(金銀パラジウム合金)とセラミックを直接比べた研究は、見つかりませんでした。

私が自費の材料を勧める理由

私が自費の材料を勧めるのは、見た目よりも機能のためです。

  • CAD/CAM冠は、見た目はよいのですが、やはり樹脂(プラスチック)です。研究でも、セラミックより変色しやすいことが分かっています[8]。日本の研究では、いちばん多いトラブルは外れることでした[9][10]。樹脂を含む被せ物はセラミックより合併症が多いという分析[12]や、学会の指摘[5]とも一致します
  • 金属の被せ物は見た目が目立ちますし、金属なので、被せ物の下のむし歯(二次カリエス)のリスクが高いと私は考えています。保険の金属の被せ物を調べた日本の研究でも、だめになる理由の上位にむし歯(15.8%)が入っていました。一方で、平均約20年もっていたことも分かっています[4]

そのため、機能の面から、セラミック(e.maxなど)やジルコニアを勧めることが多くなります。

被せ物の下の「土台」の話

神経を取った歯に被せ物をするときは、歯の根に土台(支台築造)を立てることがあります。土台には金属(メタルコア)とファイバー(グラスファイバーの芯と樹脂)があり、どちらも保険で選べます[16]。

私は、金属の土台は、歯の根が割れる(歯根破折)リスクが高いと考えています。日本補綴歯科学会のガイドライン(2008年)も、ファイバーは硬さが歯の根(象牙質)に近く、歯根破折を防ぐとして、ファイバーの土台を勧めています[13]。

一方で、その後の臨床研究をまとめた分析では、金属とファイバーで、歯根破折の起こりやすさに差がなかったという結果も出ています[17][18]。学会のガイドラインと新しい研究で、結論が分かれているところです。

違い2: かけられる時間

私は、自費の治療のいちばんの強みは、時間をかけられることだと思っています。

保険の治療は、国が決めた料金の中で行います。そのため、多くの患者さんを診る必要があり、一人の患者さんにかけられる時間が、どうしても少なくなってしまいます。

自費の治療では、そこに時間を割くことができます。たとえば、できあがった被せ物がうまく合わなかったとき、無理にそのまま入れるのではなく、作り直すという選択ができます。この余裕が、結果として長持ちにつながると考えています。

ただし、自費でも合わないことは多々あります。材料がよくても、合わないことはあります。だからこそ、合わなかったときに作り直す余裕があるかどうかが大事なのです。

私が自費を勧めないとき

ご自分の口に、あまり興味を持っていない方には、自費は勧めません。保険でも、最低限の治療は十分にできるからです[1]。

自費の被せ物も、手入れをしなければ長持ちしません。歯みがきや定期検診を続けられるかどうかは、材料以上に大切です。

自分や家族なら、どうするか

私なら、被せ物や詰め物(補綴)は全部自費にします。一方で、歯周病の処置や、小さなむし歯に詰める白い樹脂(CR)くらいなら、保険で受けます。

なお、私自身は、これまで詰め物や被せ物をしたことがありません。いちばんお金がかからないのは、被せ物が必要にならない状態を保つことです。定期的な口のケアが、何より大事だと思っています。

よくある誤解

1. 保険の治療は「安かろう悪かろう」

保険でも、必要な治療は最低限十分にできます[1]。保険の金属の被せ物も、平均約20年もっていたという研究があります[4]。

2. 自費を勧めるのは、儲けたいから

自費の強みは、材料の選択肢と、時間をかけられることです。合わないものを無理に入れず、作り直す余裕が生まれます。

3. 保険の白い歯(CAD/CAM冠)は、セラミックと同じ

見た目は似ていても、材料は樹脂です。セラミックより変色しやすく[8][3]、外れやすいことが分かっています[9][10]。歯ぎしりや食いしばりで歯がすり減っている人などには、推奨されていません[7]。

4. 自費なら一生もつ、必ず合う

自費でも合わないことはありますし、手入れをしなければ長持ちしません。材料だけで決まるわけではありません。

5. 目の前の1本だけで決める

歯の治療の話は、どうしても「この1本」の話になりがちです。でも、ほかの歯をどう治療するか、口全体でどうしていくかというゴールがないまま、その場しのぎの治療を重ねると、後から必ずほころびが出ます。

自費を勧められたときに、聞いておきたいこと

  • 口全体で考えた計画ですか?この歯だけでなく、ほかの歯をどう治療していくか、これからどうなるかを聞いてください。「一口腔単位」で考えているかどうかは、遠慮なく聞いてかまいません
  • この歯は、自費で治療したとして、長く持つ見込みがありますか?歯の根の状態によっては、どの材料でも長く持たないことがあります
  • 保険だと、どうなりますか?材料、見た目、持ちの違いを比べて説明してもらってください
  • 合わなかったときは、どうなりますか?作り直しなどの対応を確認しておくと安心です

説明が足りないと感じたら、ほかの歯科医師の意見(セカンドオピニオン)を聞いてみてもかまいません。歯医者の選び方については、歯医者選びに「正解」はない。でも「スタンダード」はある。歯科医師が内側から書く、医院を見る3つの物差しにまとめました。

費用について

この記事では、具体的な金額は書いていません。自費の料金は医院ごとに決められていて、地域によっても違うからです。

なお、自費の治療費も、医療費控除の対象になる場合があります。国税庁は、金やポーセレン(セラミック)は歯の治療材料として一般的に使われているので、これらを使った治療の費用は対象になるとしています。一方、見た目をよくするための歯列矯正などは対象外です[19]。

よくある質問

Q. 保険でも、白い歯にできますか?

A. できます。前歯から奥歯まで、樹脂の白い被せ物(CAD/CAM冠)が保険で使えます[2][7]。ただし、樹脂なので変色しやすく、外れやすいことが分かっています[8][9]。歯ぎしりのある人などには推奨されていません[7]。

Q. 自費の方が長持ちしますか?

A. 材料によります。研究では、セラミックはメタルボンドと同じくらい長持ちし[6]、保険の金属の被せ物も平均約20年もっていました[4]。樹脂の被せ物は、セラミックより合併症が多いとされています[12]。自費でも合わないことはありますし、手入れ次第でも変わります。

Q. 保険と自費を組み合わせることはできますか?

A. 国が決めた範囲に限られます。歯科では、前歯の金合金など、金属床の総入れ歯などが対象です[1]。

Q. 自費の治療費は、医療費控除の対象になりますか?

A. 金やセラミックを使った治療は、対象になるとされています。見た目をよくするための矯正などは対象外です[19]。

Q. 自費を勧められて迷っています。

A. 口全体で考えた計画か、その歯が長く持つ見込みがあるかを聞いてみてください。説明が足りないと感じたら、ほかの歯科医師の意見を聞いてもかまいません。

この記事を書いた人

現役の歯科医師です。歯科医師として5年以上、口腔外科を中心に診療しています。私自身は、これまで詰め物や被せ物をしたことがありません。保険か自費かよりも、口全体で長く歯を守るにはどうするかを、患者さんと一緒に考えたいと思っています。

参考文献

  1. 厚生労働省. 保険外併用療養費制度について(2026年10月閲覧). リンク
  2. しろぼんねっと. 歯科診療報酬点数表(令和8年) M015-2 CAD/CAM冠(1歯につき). リンク
  3. 日本歯科医師会. テーマパーク8020「差し歯・冠」(2026年10月閲覧). リンク
  4. Yoshino K, Ito K, Kuroda M, Sugihara N, Sekine H. Survival Rate of Metal Crowns Covered by Public Health Insurance System in Japan: A Quality-of-Care Perspective. Bull Tokyo Dent Coll. 2024;65(4):65-73. DOI
  5. 田上直美. 保険診療における CAD/CAM 冠の診療指針 2020. 日本補綴歯科学会誌. 2022;14:244-249. リンク
  6. Pjetursson BE, Pitta J, Balet A, et al. A Systematic Review and Meta-analysis Evaluating the Survival, Failure, and Complication Rates of Metal-Ceramic, Veneered, and Monolithic All-Ceramic Tooth-Supported Single Crowns—Part 1. Int J Prosthodont. 2026;39(3):308-324. DOI
  7. 日本歯科医学会. CAD/CAM 冠に関する基本的な考え方(令和8年3月). リンク
  8. Paolone G, Mandurino M, De Palma F, et al. Color Stability of Polymer-Based Composite CAD/CAM Blocks: A Systematic Review. Polymers (Basel). 2023;15(2):464. DOI
  9. Inomata M, Harada A, Kasahara S, et al. Potential complications of CAD/CAM-produced resin composite crowns on molars: A retrospective cohort study over four years. PLoS One. 2022;17(4):e0266358. DOI
  10. Fuchida A, Nishio F, Higashinakao T, et al. Clinical survival of CAD-CAM composite resin crowns in anterior and posterior teeth: A four-year retrospective cohort study. J Prosthodont Res. 2026 (online ahead of print). DOI
  11. Krug R, Droste L, Schreiber C, et al. Long-term performance of ceramic in/-onlays vs. cast gold partial crowns—a retrospective clinical study. Clin Oral Investig. 2024;28(5):298. DOI
  12. Alghauli MA, Al-Gabri RS, Keshk A, Mirah MA, Alqutaibi AY. Clinical Complications and Survival Rate of Resin Matrix Ceramic Restorations: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Esthet Restor Dent. 2025;37(7):1721-1739. DOI
  13. 日本補綴歯科学会 医療委員会 診療ガイドライン作成部会. 歯の欠損の補綴歯科診療ガイドライン2008. 日本補綴歯科学会誌. 2009;1(2). リンク
  14. Bader JD, Shugars DA. Summary review of the survival of single crowns. Gen Dent. 2009;57(1):74-81.
  15. Pjetursson BE, Sailer I, Zwahlen M, Hämmerle CH. A systematic review of the survival and complication rates of all-ceramic and metal-ceramic reconstructions after an observation period of at least 3 years. Part I: Single crowns. Clin Oral Implants Res. 2007;18 Suppl 3:73-85. DOI
  16. しろぼんねっと. 歯科診療報酬点数表(令和8年) M002 支台築造(1歯につき). リンク
  17. Figueiredo FE, Martins-Filho PR, Faria-E-Silva AL. Do metal post-retained restorations result in more root fractures than fiber post-retained restorations? A systematic review and meta-analysis. J Endod. 2015;41(3):309-316. DOI
  18. Martins MD, Junqueira RB, de Carvalho RF, et al. Is a fiber post better than a metal post for the restoration of endodontically treated teeth? A systematic review and meta-analysis. J Dent. 2021;112:103750. DOI
  19. 国税庁. タックスアンサー No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例(令和8年4月1日現在法令等). リンク

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